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つや子さんの思い出

2023/05/08
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つや子さんの思い出

4月の記録-その2。

このところ訃報がらみの記事が多くて心苦しいけれど、
どうかご勘弁を。

 

4月11日(火)は、早朝に函南を立って、
電車を乗り継ぎ、総武線・成東(なるとう)駅に着き、
タクシーで向かった先は、千葉県山武市にある「JA斎場ひゅうが」。

ここで午前10時から
「さんぶ野菜ネットワーク」の設立時からのメンバー、
佐藤秀雄さんの妻、つや子さんの葬儀が行われた。

 

佐藤秀雄・つや子夫妻とのお付き合いは、32年前に遡る。

1990年から始めた大地を守る会の「稲作体験」企画は、
2年目から秀雄さんの田んぼをお借りして行うようになった。

田植えから始まって草取りを2回、そして稲刈りと、
年4回の作業を通じて米づくりの行程を体験する企画
(種まきから始めた年もあった)。

2年目からは参加者も100人規模となって、
段取りやら作業後の交流プログラムやら収穫した米の配布方法等々、
まだ試行錯誤の中にあった。

無事終了した、その1991年の秋、
JA山武郡市睦岡支所・有機部会(野菜ネットワークの前身)と
大地を守る会が合同で開催したイベント「さんぶ収穫祭」で、
僕は「体験田」で収穫されたお米を5㎏、
地主の秀雄さんにプレゼントした、感謝を込めて。

ところが秀雄さんの反応は軽くて、
「米はよぅ、足るほどあっから、いんねぇよ。
 それより会員さんにあげてやってくれ」と言うのだ。

その気風(きっぷ)の良さにワル乗りして僕は、
「秀雄さんが独身の女性にプレゼントしたいと言っておりま~す。
  ここに独身の方はいらっしゃいますか~」と
やってしまった(秀雄はまだ独身だった)。

そのときに手を上げたのが、
会員さんに誘われて参加していたつや子さんだった。

 

物語はそれからである。

つや子さんはいったん米5㎏ を持ち帰ったものの、
玄米だったので、秀雄さんに電話して「精米して」と頼んだ。

引き受けた秀雄とつや子は、千葉駅の総武線ホームで待ち合わせをした。
しかし運命の神とはいたずらが好きなのか、
その日、つや子の仕事が終わらなかった(福祉施設に勤めていた)。

「もういないだろうと思ったけど、行くだけ行ってみよう」と
つや子は千葉まで向かった。
携帯電話もなかった時代の話である。

そして3時間遅れで千葉駅に降りたつや子は、
ホームの端でずっと待っていた秀雄を目撃することになる。

あとはトントン拍子である。
3ヵ月後の披露宴で、僕は長渕剛の「乾杯」を、
音程外しまくりで歌った。

結婚の報告を受けたときに、僕はつや子さんに聞いたのを
今でも覚えている。

「農家の嫁になるけど、大丈夫?」
「何言ってんのよエビちゃん。私、農業、嫌いじゃないから」

 

あれから30年余。
つや子は秀雄の両親の世話をしながら、秀雄の農業を助けた。
秀雄は、食の安全や環境云々よりも、
何よりいい野菜を作りたいの一心で有機にトライした、
そんなタイプだ。篤農家と言うんだろうか。
彼の作ったスイカは絶品だった。

そういう人は、とにかくよく働く。
たぶん夢中でついていったんだと思う。
つや子はいつの間にか、すっかり農家の女性になっていた。

そしてコロナ前まで、「稲作体験」は続いた。

<おまけの一枚。若い頃のエビです。>

 

つや子さんはその間、いやこれまでの間、
ずっと裏方として「稲作体験」を支えてくれた。

前日から準備に入るスタッフのために布団を干し、
宿として自宅を開放してくれた。
若い連中たちには食事作りを教え、
たまには夜に羽目を外してカラオケスナックに繰り出したりした。
会員さんのために用意したお手製のしそジュースは、絶賛だった。

職員が怠けると、厳しいお叱りを浴びせてくれた。
とくに女子スタッフには厳しかった気がする。。。
おかげで「来年はやりたくない」という女子が、毎年何人か発生した(笑)。
鍛えてくれたね。

 

まあそんなこんなで、
彼女がいなかったらどうなっていただろうと思うと、
改めて感謝の念がこみあげてくる。
つや子さん、ありがとう、本当に。。。。

 

つや子の容態がどうも厳しい・・との連絡で、
お見舞いの日程を調整していた矢先の訃報だった。

亡くなる直前まで FaceBook に前向きの記事を上げていた
つや子さんの、強さを支えていた根源は何だったのかを、
いつか聞いてみたい。

記憶をたどって思い出す最後の会話は、何年前になるか。

「エビちゃん、たまには遊びに来てよ。カラオケ、行こ」
「分かった。何とか調整してみるよ」・・・

約束は、果たせなかった。。。

 

葬儀会場には、つや子さんが趣味にしていた切り絵が飾られていた。

楽しかったと振り返って逝かれたことを、ただ祈るばかり。

合掌。

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