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農業における「加工」の役割とは-

2023/04/23
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農業における「加工」の役割とは-

<前回からの続き>

意見交換に先立って行われた、
農水省からの「基本法の見直し検討」の進捗報告のなかで、
こんなくだりがあった。

74ページにおよぶ説明資料のなかで、
「加工・業務用野菜」について触れた箇所が1ページだけあった。

「加工・業務用野菜」における輸入の割合が、
2020年までの30年間で、
12%から32%に上昇したとのグラフが示され、
「国内で加工・業務用への転換が進まず、
  加工・業務用での輸入割合が拡大している」
との説明である。

要するに、加工用・業務用への生産転換が進まないために、
加工業者は輸入を増やしている、と言うのだ。

この説明を聞いて、思わず口が開(あ)いた。
・・・論理が逆立ちしている。これが国の認識なのかと。

 

加工用・業務用の野菜が増えないのは、
ひとえに、作っても価格が合わないためだ。

「ないから輸入品で手当てしている」のではなくて、
加工者もまた「安い原料を選択」させられているのである。
モノがなくなる端境期に輸入野菜が入ってきていた昔とは、
様相は異なっている。
業者は1円でも安い原料を探しているし、そうせざるを得ない。
生産者側から見れば、生産を増やそうとしても、
「(その値段じゃ)作れない」のが本音ではないか。

一方で、安い輸入原料がいつまでも安く手に入る時代は
終わりつつある。
かつて輸入元であった中国に買い負けるような事態も生まれている。

そんなこんなで、日本農業は脆弱化し、
国土は劣化の一途をたどっている。
それが今の日本の「(貧しさに向かう)現状」である。
このしっぺ返しは、最終的に「消費(者)」に行きつくことになる。

 

では、どうしたらいいのか。
以下、有機JAS認定工場を運営する食品加工会社の立場から、
私見を述べさせていただきたい。

有機農業の生産を拡大・発展させる上で、
あるいは「有機」に限らず国内の農業生産を支え、
食料自給力を高める上で、
農産加工という分野はけっこう重要な位置を占めている。
それはけっして74ぶんの1ページというような比重ではない。

それは、必ず発生する規格外品や余剰農産物を吸収する
受け皿としてあるだけでなく、
商品化によって別な価値を与えてあげる(「付加価値」をつける)、
いわば農業生産に並走する支援部隊であるし、
食生活にバリエーションを提供したり、
多忙な現代人のニーズに対応した食材の提供という意味で、
なくてはならない分野である。

にも拘らず、その多くの原料が輸入依存を強めていってる。
小麦や大豆といった自給率の低いものだけでなく、
国内にあるはずの野菜や果物までもが。

主たる理由は「価格差」である
(製造ロットに必要な原料の安定確保という数量的な問題もあるが、
 価格差が生産増を妨げている)。

タケノコ産地にいながら、中国産タケノコを輸入せざるを得ない、
というような現状を、農水省はどう考えているのだろうか。
もし「そこは自由競争だからしょうがない」で済ましているなら、
あまりに知恵がなさすぎる。
基本法の理念も空しくなるというものだ。

 

鍵となるのは、
地方にまだ多く残っている中小の農産加工業者の活用だと考える。
たとえば、地域の農業者と加工業者がタイアップして、
双方でとり決めた価格で契約して利用することを支援する。
生産者ブランドでの加工品を開発してもいいし、
一緒にご当地加工品を開発してもいい。

そういう「取り組み支援」はやっている、と言いたいかもしれない。
しかしここで僕が言いたいのは、価格補償的な支援である。
飼料用の米作りに補助金が付くように、
加工用農産物にも助成があってよいのではないだろうか。

加えて求められるのが「地産地消」の支援であり、
その最適な場のひとつが学校給食だと思う。
しかし限られた給食費でやり繰りさせらている現状では厳しい。
ここはぜひ「学校給食の無償化」を断行してほしい。
「食育」の推進だけでなく、雇用の確保とともに
地域の活性化(経済循環)にも貢献できるし、
輸送エネルギーや廃棄物削減にもつながる。これぞSDGsだ。

(最終的に「消費(者)」支援(=消費拡大)につながることこそ、
 生産者が求めていることである。
 彼らは単純に補助金を欲しがっているわけではない。)

 

これまで国は、農業と加工という観点では、
いわゆる「六次化支援」という施策を行ってきたが、
生産者が自ら加工場を作って自ら売るというような
「新たなリスク」を背負わさせるのではなく、
地元の加工業者(=技術を培ってきた加工のプロ)が
地元の原料を使って「美味しくて安全な」加工食品を作る
(食品加工を本来の姿に戻す)、
またコラボして特産品を開発する。
地元の子どもたちには、新しいレシピを創作してもらおう。

そんなプロジェクトが全国で展開され、地域が活性化するような
取り組みを後押しする政策が欲しいと思うのである。

そこから、地域食材(=地域の風土や環境)を大切にする、
新たな「食のクリエイター」が各地に生まれると、楽しくならないか。


(地元原料で勝負する。酪農王国オラッチェ売店にて)

 

「基本法」では、第2条、11条、17条に
「食品産業の健全な発展」という字句が散見される。

では「食品産業の健全な発展」とは、どういうものか。
少なくとも、ITを活用した企業型(設備型)農業生産や、
ドローンでの農薬散布などを後押しすることではないだろう。
それらこそ「自由競争」という名の(経営体の)自己責任で、
果敢にチャレンジしてもらえばよいのだ。
このあたりにどうも、どっちを向いた農政なのかが垣間見える。
「食」ではなく「先端技術(産業)の発展」だとするなら、
農林水産省とはいかなる省か。

農業の経営基盤の強化、自給力の向上、
国民の食生活の安定と豊かさの向上、生物多様性の保全、脱炭素、
SDGs、等々・・・
これらの目標を包摂的に進められる道筋は、明らかである。
それは前回紹介した多くの提言・意見に表現されているが、
もう一つ付け加えさせていただけるなら、
「地域で踏ん張っている食品加工業との連携」
を挙げさせていただきたい。

 

荒れてゆく竹林を背に感じながら、
中国産タケノコを仕入れて産地偽装で訴えられた、
歴史ある地元の缶詰工場(僕の郷里の話です)・・・
こんな泣けてくるような現実をもたらしているものは、
いったい何なのか!

「食品産業の健全な発展」と、上から目線で抽象的に謳うだけでなく、
国民の健康と国家の強靭化のために、
あるべき食品産業の方向性、ビジョンを示さないと、
「有機」の拡大はおろか、
高い技術を持った「ニッポン農業」の維持すらおぼつかないと、
小ながらも「日本の一次産業を応援する」を理念に掲げる
加工者の思いとして、訴えておきたい。

 

まあ、お国(農政)がやらなくても、俺はやるけど-

ここまで共に生きてきた彼ら生産者たちを、
裏切るワケにはいかないからね。

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