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スピリッツは生きているか -ORD3連チャンを終えて-

2023/03/12
  • あんしんはしんどい日記
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スピリッツは生きているか -ORD3連チャンを終えて-

ORDリアルイベント三日目は、
やっぱり4年ぶりということもあってだろう、
「同窓会」? というのもヘンだが、
懐かしい顔ぶれでささやかな一席を持ちたい、
というお声掛けをもらって、出向いた。

久しぶりの再会で、このまま別れるのは忍びない。
少人数でアットホームに・・という気持ちは、分かる。
しかも昔からの付き合いで、
すっかり仲良しになっている生産者と消費者たちからだ。
少々面倒くさい、いや失礼! 手ごわくもある相手だが、
大地を守る会が、彼ら彼女たちの「大地愛」で支えられてきたことは、
間違いない。
そういうグループからのご案内である。

ここはいくしかない。 ・・・って、嫌なの?
いえいえっ、と・とんでもない、な・何をおっしゃいますか、
喜んでうかがいますよ! -ということで。

 

場所は東京・日本橋、遠忠食品さんのビルの3階。
遠忠食品さんもFBに移ってから、
さらに関係を深めたメーカーの一つである。

一昨年から取り組んだメンマでは、
味付けという最終工程をお願いした。
いわば商品開発のアンカーを務めてもらったということだ。

逆に昨年、遠忠さんから打診を受けたザーサイ栽培では、
酪農王国オラッチェにつないで、試験栽培にトライしてもらった。

引き受けてくれたのは、農園&動物担当の若手、磯野夏さん。
オラッチェ面々からは「なっちゃん」と呼ばれ、愛されている。

遠忠食品・宮島社長から渡された栽培歴を参考に、
手探りでの栽培が始まった。
9月に播種、10月に定植、そして何度かの草取りを経て、
12月の頭、なっちゃんからメールが入ってきた。
「順調に来ていると思うんですけど、収穫適期が分からない」と-

当時の様子(12月4日撮影)。
素人目には、まったく問題ないように見える。

そこで宮島さんに写真を送ってアドバイスをもらったり、
何度か試し切りしながら、茎を肥大させていった。

問題は、茎の肥大が進むと、中に空洞ができること。
そこに水がたまると、腐敗が始まる。
内側が変色すると、商品にならない。
逆に小さいと商品価値もイマイチとなり、金にならない。
「霜に気をつけろ」と宮島さんから連絡があった。

丹那盆地に初霜が降りたのは、12月10日過ぎだったか。
ここは重量を取ろう(太らせよう)と、あまり欲を出さず、
きれいなうちに穫ったほうがいいと思って、
「20日過ぎには収穫した方がいいんじゃないか」と
なっちゃんに伝えた。
なっちゃんからの返答は、作業や業務スケジュールの都合も
あったと思われ、「26日に収穫します」だった。

この間の約一週間は、仕事に集中しているつもりでも、
ザーサイのことが頭から離れなかった。

クリスマスの明けた12月26日、予定通り収穫。
なっちゃんから写真が送られてくる。
「変色は見られません」と。

僕はすぐに遠忠さん指定の工場に送るように指示した。
工場に届いたのは、仕事納めの28日。
何とか受領してもらった。

正月休みはドキドキしながら過ごした
・・・てことはないか。
送ってしまえば、あとは審判を待つのみなので。

1月中旬に入った頃、宮島社長から電話が入る。
「ちょっと小ぶりな感じだけど、問題ない。
 赤伝(ロス)もない。全量ぶんお支払いします」とのこと。

早速なっちゃんに伝えると、
「全部ダメ出し食らうんじゃないかと、ドキドキしてました」と
喜んでくれた。
正月落ち着かなかったのは、なっちゃんのほうだった。

静岡県函南町産・無農薬ザーサイが製品となって
お目見えするのは、5月か6月あたり。
他の産地のモノと一緒になるので表示は「国産」のみだけど、
オラッチェ売店では、売る気満々である。
宮島社長からは、「今年も作って」と頼まれている。

こういう “ つなぎ ” の仕事は、一銭にもならないけど、
「ネットワーカー」(ネットのお仕事ではありません)を自称する
ワタクシにとっては、小銭を稼ぐより嬉しかったりする。

 

「同窓会」の話は? 、、、もういいか。
20数人ほどで、和気あいあいとお喋りし合った。
三日酔いにもかかわらず、持参した「種蒔人」が
あっという間に一本空いた。

生産と消費とは、つねに利害が対立するものである。
そのなかで、「作る(売る)人」と「食べる(買う)」人の
信頼関係をどうやってつくっていくか-
そしてどう、未来を築く仲間となれるか-
大地を守る会の40数年間は、ある意味で実験だった。
そのささやかな成功事例のひとつが、いま目の前にある。
怒涛の3連チャンは、この感慨をもって締めたい。

 

そんなことを書き留めている間に、
12年目の3.11が過ぎた。

地震・津波に原発事故が重なった未曽有の災害から12年。
いまもなお3万人の避難者が残されている。
昨日までの災害関連死は3,736人とのことだ。

国(政府)の進める原発再稼働には、
異議を申し立てたい点が山ほどあるが、
それは別な機会に気合入れてやるとして、
あの年の、このことを、記して終わりにしたいと思う。

大地を守る会には「備蓄米」と呼ぶ制度があった。
「平成の米パニック」と呼ばれた騒動のあった翌年、
1994年から始めた米の年間予約制度である。
生産者は、福島県須賀川市の稲田稲作研究会
(現在の法人名は「ジェイラップ」)。

あの年(2011年)、
「このまま米を作っても大丈夫なのか」と
不安のどん底にあった生産者を前に、
代表の伊藤俊彦さんは
「とにかく今年も種を蒔こう、蒔かないと始まらない」
と鼓舞して、敢然と作付けを進めた。
そして「米(の安全)を守る」ために、あらん限りの対策を講じた。
学者も顔負けの実践理論に、視察や取材がひっきりなしに
訪れたものだった。
そういえば中東の報道局「アルジャジーラ」も、
撮影班を連れてやってきたことがあったな。
記者は取材後、伊藤さんを指さして
「彼は本当に農民か?」と聞いた。
学者を呼んで説明させているのでは、と怪しまれたのだ。

しかし最も大きな不安は、消費者の反応だった。
結果もまだ見えない夏の間に予約を取るのは、
さすがに無謀だとも言われたが、
彼らの必死の取り組みを伝え、支えるには、
「(販売を)やめる」という選択肢はなかった。

募集を開始して間もなく、こういう反応が上がってきた。
「彼らが作ると言うなら、私は信じて食べます」
「今度はこちらが応援する番ですね」

予約を入れてくれた会員は激減したけれども、
それでも500人を超えた。
この数を、伊藤さんと僕は「奇跡のようだ」と語り合った。

俺たちは孤立していない。
ここから再出発だ。

以来、伊藤さんの口癖は
(食べてくれる人のために)「つくる責任を果たす」である。

有機JASだとか特別栽培だとか区別する前に、
有機農業の根幹のようなものを、僕らはこうして学んできだ。

いまのORDに、
そのスピリッツが生き続けていることを願いたい。

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