あれから1年‥(2月の読書から)

公開日: : 最終更新日:2023/03/06 かんなみ百景, 雑記その他

2月23日、祝日。

伊豆の名物・河津桜が見ごろを迎えているというニュースに刺激され、
近くの “ かんなみ桜 ” (河津桜と同じ種)を眺めに行った。

 

満開の樹もあれば、まだこれからという樹もあり、
全体的には七~八分咲きくらいだろうか。

花見客はまださほど多くはなく、
それぞれのんびりと歩きながら、家族で写真を撮ったり、
会話をはずませたりしている。
土手に寝転んで、くつろいでいるカップルもある。

ひと足早い桜に癒されながら、
みんな、このひと時を楽しんでいる。

 

平和だなぁ、この平和はとても大事なことだ、と
つくづく思う。

この星の裏側で、バタバタと人が死んでいるなんて、
そして激しい爆撃におびえ、耐えながら、
地下室での生活を強いられている子どもたちがいるなんて、
想像もできない。。。

平和にも 憂い八分の 早や桜 - なんちゃって俳句。

 

ロシアによるウクライナ侵攻から、もう1年になる。

もはや2国間の争いでは収まらなくなって、
米欧Vs.ロシアの図式となって、どっちも引くに引けず、
まさに “ 泥沼 ” にハマった状態だ。
当時の「すぐに終わるだろう」の予測が、空しく思い出される。

 

 

そして日本では、この事態に便乗するかのように、
大手を振って「軍備増強論」が跋扈(ばっこ)してきた。
しかも財源は国債で調達するという、まるで戦時下の話である。

「禁じ手だ」とか「火事場泥棒の論理」とか、
学者からは非難の言葉が放たれるが、
首相自慢の「聞く耳」は、とうとう塞がれたようだ。
やるしかないとばかりに。

 

昨年末に、黒柳徹子さんの超長寿番組『徹子の部屋』で、
タモリさんが言ったそうだ。

「2023年はどんな年になる?」の問いに答えて、
「新しい戦前になるんじゃないでしょうかね」
と。

その話を聞いて、改めて
一昨年に亡くなられた自称 “ 歴史探偵 ” 作家・半藤一利さんと
昭和史研究家・保坂正康さんの対談集
『ナショナリズムの正体』(文春文庫)を読み返した。
文庫版は2017年9月刊だが、
対談自体は2014年に行なわれたものである。

「戦争できる国」に向かって、最初は掛け声先行で
「腹にイチモツ持って」蠢(うごめ)いていたものが、
いつの間にか公然と歩きだし、ついには小走りへと豹変する。

半藤・保坂両氏は、そんな過去に重なる日本の様相を憂いつつ、
語り合っている。 いくつか言葉を拾ってみる。

 - 戦争とはウソの体系である。
 - 口当たりのいい改正論は、つまりは情緒論にすぎない。
   国防という国家の大事に関する論議は、いっそうの冷静さと合理性が
   求められるのに、情緒で憲法を変えようとするのは、
   きわめて危険な詐偽的な発想なのである。
   ~ それは少しも歴史を学ばない、ということなのである。

 - 損得計算のナショナリズム ~
   しっかりとした自我を持った日本人であってこそ、
   初めて真のナショナリズムを持つことができる。
 - 戦争は天から降ってくるものではない。われわれ人間が錯覚や誤判断や、
   相手に対する恐怖心からつくりだす。
 - この政治の行きつく先は、自己警護という名の戦争。
 - 決して、戯れに愛国者になってはならない
    ~ われこそ愛国者と思っている人ほど危ない。
 - 何か勇ましそうに見える急激な改革はしないほうがいい。
   ~ これが、後世へと私たちの伝えるべき英知、守るべき英知なんですよ。
 - 日本が再軍備を考えるのならば、その前に、
   先の戦争について猛勉強しなければならない。
 - 戦争という選択肢を捨てた日本は、国際的に大きな評価を得ている。
   ~ それこそがいまの日本の最高の国益

 

歴史を学ばない政治家に、未来を任せるわけにはいかない。
そんな先達のイラ立ちが伝わってくる。

ちなみに、僕が勝手に受け止めている半藤さんの遺言は、この一文だ。
「日本人よ、しっかりと勉強しよう」
 (『太平洋戦争への道 1931-1941』
    半藤一利・加藤陽子・保坂正康著、NHK出版新書)から。

 

 

「平和」は天から降ってきた恩恵ではない。
たゆまない努力によって守られるものである。
しかしこの国ではいま、戦争ができ・それに勝てる強い国になることが
目標となってきた。
それは隣人とたたかうことに他ならないのに。。

『ナショナリズムの正体』で、保坂さんは、
「平和」は最終目標であり、いまだ実現されていない理想だと語っている。
憲法を「平和」だと言った瞬間から、日本という国から努力目標が消えてしまった、
とも。

対して半藤さんは、「平和とは退屈な現実だと思われている」と返す。
若者たちにとって今は
「このままじゃ、たまらない(そんな現実に生かされている)」
んじゃないかと。

共同体のない孤独な若者の心は、国家と直結する。
国と心情が直結すると、(たとえば)従軍慰安婦問題の本質が見えなくなる。
あの当時、女性に残酷なことをしたのは紛れもなく日本人であり、
実態として利用したのは日本という国家だった。
その事実に対して、今の日本という国がどういう態度をとるのかを、
世界の国々は見ている
 ~ 根本は、「苦しんだ人への想像力を持てるか」である。
世界のなかの日本という視点が欠けている。
想像力を持てない国は、崩壊する・・・

 

僕らはいまのウクライナを想像できるだろうか、
という問いは苦しすぎる。
想像しようとする努力、こそ持ち続けたいと思う。

 

最後に、この一冊からも、引いておきたい。

  ジェンダーの平等は国際平和を促進する。
  戦争はたいてい、家父長制の価値観や男らしさが売り物の政治家が煽る
  ものだからだ。
   -『21Lessons 21世紀の人類のための21の思考』
     (ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社)から

以上、2月の読書から、でした。

 

桜を愛する人々へ-
けっして簡単に散るのは、やめましょう。

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