栗と、地球の涙

公開日: : 最終更新日:2022/10/22 雑記その他

台風の波状攻撃を受けながら持ちこたえた田んぼも、
10月に入り、無事刈り取られた。

酪農の地であるここ丹那盆地では、稲ワラは大事な畜産飼料となる。
収穫後、数日田んぼに干されていたワラは
ロールベーラーで乾燥ロールとなって蓄えられる。
この作業をJAが請け負うことで酪農家は牛の飼養管理に集中できる。
こういった作業の請け負い事業は
「酪農コントラクター」、通称コントラと呼ばれているが、
伝え聞くところによると、このコントラ事業はどうも赤字らしく、
農協は継続に頭を悩ませているという。

加えてこの間の燃料の高騰である。
「食」の生産基盤は、消費者の見えないところで、
じわじわと追い詰められていっている。

この国のトップは、「円安のメリットを最大限に生かして~」とか、
「輸出を促進して成長産業に~」とか宣(のたま)うけれど、
いのちの産業をお金(経済)でしか計れないような国にしてきたことの
危うさと脆(もろ)さには気づいていないようだ。
そしてどうなっていこうが、政治家も官僚も、責任は取らない。
その被害を被るのは国民である。
そこには生産者と消費者の区別はない。つながっているから。

 

秋の風景が深まっていく10月。
9月に蒔かれたソバも、もう花盛りである。

ここで受粉作業を請け負うのは、虫たちである。

ソバの栽培から行なう『丹那そば 亮月』のご主人が言うには、
「畑の中を見ていると、ちっちゃな虫がせっせと飛び回っている」んだとか。
だからか、彼は農薬を撒かない。
「食」は生態系の絶妙なバランスの上に成り立っているのだ。

これから実が成り、無事に収穫まで乗り切って、
おいしい地元産のお蕎麦が食べ続けられることを願う。

週に一度はここの蕎麦を食べる。
それは僕にとっての、大事な「投票行動」でもある。

 

さて、春に、タケノコの水煮をもらってから
天ぷらにハマってしまったことを以前にお伝えしたけど、
今年はなんと、秋にも、いただき物があった。
栗である。 しかも生の栗。

これまた週に一度は通う定食屋のお母ちゃんが、
店を出た後に追いかけてきて、「良かったら、食べて」と渡された。
「生だけど、圧力釜なら簡単よ」と・・・

残念ながら、圧力釜は持ってない。
こりゃ厄介だと一瞬ひるんだけど、ありがたく頂戴した。
頭を下げ、やるしかない・・と腹を決めた。

 

まずは、茹で栗。

洗って、水に浸して、塩を入れて、茹でること約1時間。
冷ましてから、半分に切ってスプーンでほじくりながら食べる。
まあ、これが一番簡単な食べ方か。

 

続いて、蒸し栗にもしてみる。

さらにこうなったら、栗ご飯にも挑戦してみようと、思い立った。

渋皮を剝くのが「容易じゃねえなあ、これは」とか
独りごちているあいだに、だんだん無心になってくる。

本来は生のまま剥いて、水にさらしたりするんだろうけど、
蒸しちゃったやつを、そのまま使った。

 

 

塩を足して、いざ炊飯。
釜のスイッチを押して、待つこと約50分・・・
ついに、お手製「栗ご飯」の完成! です。

生まれて初めて、自ら栗を剥いてつくった栗ご飯。
自画自賛で、★ 三っつ! と褒めておきたい。

 

以来、栗にハマってしまって、
スーパーで衝動買いしたり、大地を守る会から取り寄せたりして、
栗三昧の秋となった次第。

「季節を味わう」とは気軽に使う表現だけど、
その味わいの深さは、手間の量に比例すると知った。
今さらながら・・・ですね。

単身赴任者を気遣ってくれる定食屋のお母ちゃんに感謝しつつ、
しかしここ丹那でも、栗畑がだんだんと放置されてきていることも、
僕は知っている。
これは何がしかのメッセージだろうかと、考えたりする。

「食」の豊かさや、ホンモノの季節感は、
徐々に徐々に、堀を埋められていっていることを、僕らは
もっと深く考えるべきだ。

いっぽうで世界は、どこも自国ファーストの意識が強くなり、
いろんなかたちでの戦争が繰り広げられている。
まさに今もまだ、「地球は泣いている」
(大地を守る会創設時に使ったコピー)だ。
あれから40年以上になるというのに・・・・・

 

10月14日、雨が上がって、
丹那牛乳(JA函南東部)の上空に虹がかかった。

 

その昔(1970年代)、喜納庄吉&チャンプルーズが歌ってたな。

さあ思い出せもう一度 とめどなくやさしい愛を
彼らと歌い踊ろう 地球の涙に虹がかかるまで
          (地球の涙に虹がかかるまで)

 

縄文時代から食されてきた栗を撫でながら、
地球の「とめどなくやさしい愛」を、
人類は踏みにじり続けてきたことを、思ったりする。

切り札はやっぱ、有機農業だろう。
それは間違いないはずなんだけれど、
はたして間に合うか、だ。

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