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「人新世」という時代に

2020/12/30
  • あんしんはしんどい日記
「人新世」という時代に

新型コロナウィルスcovid-19 の出現に始まり、
その第3派の猛威で年を終えつつある2020年。
まったくコロナに振り回された一年だった。

小人、いや「コビッド・ナインティーン」なる、
まるで新しいアイドル・ユニットかと思わせるような
名前を付けられたウィルスにしてみれば、
ひっそりと何かの動物と共生していたところ、
ヒトという 😋(美味しい)宿主がやって来てくれたお陰で、
喜んで増殖してしまったって感じなんだろう。
しかし、ニンゲン世界は慌てふためいた。
歴史書では何度も記録されていた事態が再来したことを、
あたかも初めての経験であるかのように。

いや、偉そうに言う資格はない。
僕も4月までは呑気に生きていたワケだから。

どうやらこれは、
人の飽くなき欲望(未開地進出と収奪)の結果のようだ。
その意味で、コロナ禍と地球環境問題は同源だとも
言われている。
そしてもはや資本主義の膨張は限界に達していて、
このまま資源収奪型の発展を目指せば、
その先に見えているのは、自らの手による
人類の滅亡しかない。
これが気候変動に危機感を深める陣営の感覚である。

また「富」の偏在化(一部への集中)も明ら様になって、
経済格差の拡大が、自殺者の増加など、
コロナ禍社会をより悲惨なものにしている。

とてもシアワセな社会じゃないんじゃないの? と
covid-19 が教えてくれたようでもあり、
こんな状況を「資本主義の終末」と評する論者も増えた。

ならば・・・
根本から仕組みを変える議論を始めなければならない。
歴史的大転換を、怖気(おじけ)ず、ワクワクしながら
迎え入れる準備を始める、ということかと思う。
より本質的な豊かさへ・・・
そう思うと案外やる気も出てくるというものだ。
犠牲になったたくさんの魂を浮かばせるためにも。

その答えの一つが “ コモンズの復活 ” なんだろう。
そういうことだよね、大江さん。

そうそう、「コモンズ」といえば、
別なアプローチから同じような結論を導き出した人を
みつけたよ。
大阪市立大学大学院准教授の斎藤幸平さんという、
まだ30代の経済学者(専門は経済思想)だ。
著書は『人新世の「資本論」』(集英社新書)という。
けっこう売れているらしい。

晩期マルクス(『資本論』以後)の分析と再評価から、
「脱成長コミュニズムが世界を救う」と説いた。
その鍵となるものが「<コモン>という第三の道」
だというのだ。

ミレニアル世代からまた一人、スゴい奴が現れたって感じ。
彼らに期待しつつ、しかしその前に、
僕らは僕らの世代としての責任の取りようを
考えないといけないね。

大江さんは読んだかなあ・・・
一杯やりながら論評し合いたい本が登場したのに、
と思うと、また無念さが募ってくる。

ちなみに「人新世(ひとしんせい)」とは、
人類の活動が地質学的に見ても大きな変化を
地球に刻み込んだ時代という意味で、
新たな地質年代区分の名称として提唱されている
言葉である。

遠い未来に、この時代の地層を調べてみれば、
土壌には窒素が相当に蓄積され、
また多様な化学物質による汚染が見られる。
コンクリートやプラスチックが大量に埋没されていて、
氷層には高濃度の二酸化炭素が閉じ込められている。
放射性物質が幾度となく地球に降り注いでいたことも
推定される・・・そんな時代である。

 

コロナ感染者は世界で8千万人を超えた。
変異株も登場し始めた。
この冬のうちに間違いなく億の単位に達するだろう。
いま僕らは超ド級の歴史的大事件の真っただ中にいることを、
改めて自覚しておきたいと思う。

感染拡大を防ぐ特効薬はない(おそらくワクチンでも)。
どの国も苦戦を強いられているわけだけど、
それでもこの間とってきた日本の政策には、
どうにも苛立ちを禁じ得なかった。
何度も言ってきたことだが、もう一度書いて
今年の叫び納めとしたい。

医療体制の充実・支援を最初から徹底的にやるべきだった。
Go To~ は経済政策とは言えない。
砦に “ 安心 ” があってこそ、
人はたたかえる(経済が動く)のだから。

政治の劣化は度し難く進んでしまった。
政権交代とともに曝(さら)け出された、
前首相の堂々とした「118回の嘘」(「桜」夕食会問題)
には、どうか国民がシラケないようにと願うばかりだ。

政権が「学問の自由」を怖がっていることも、
あぶり出された。よっぽど自信がないんだね。
この問題(日本学術会議の任命拒否)については、
いろいろとメモを残しながら、結局書けなかった。
今さらギャーギャーわめくより、
とてもカッコいいと思った一人の方のコメントを記して、
いったん終えておきたい。

10月24日(土) 学術会議への任命から排除された
6名の教授が意見表明した。
その一人、宇野重規東大教授(政治思想史)のコメント。

内閣によって会員に任命されなかったことについては
特に申し上げることはない。
民主的社会を支える基盤は多様な言論活動だ。
民主的社会の最大の強みは、批判に開かれ、
つねに自らを修正していく能力にある。
その能力がこれからも鍛えられ、発展していくことを
確信している。

 

今年もチビチビと、酒と読書だけは欠かさなかった
(いやもちろん、仕事を最優先しながらです)。
いろんな本を漁って読んだ。
ここで紹介したいと思った本もいくつかあるけど、
しかし僕にとって今年一番の感銘は、
改めて再読した名著2点だった。

E.F.シュマッハー著『人間復興の経済』(1976年、佑学社)。
スーザン・ジョージ著『なぜ世界の半分が飢えるのか』
(1980年、朝日新聞社)。

出版業という “ 一見知的な ” 世界から、
まだ超マイナーだった有機農産物流通という
泥くさい世界に飛び込ませた2点、と言っていい。
夏に改めて読み直して、驚いた。
今も、生きている!と。

シュマッハーの言葉を引きたい。

われわれが必要とするのは、
健康と美と永続性のために生きるように運命づけられ、
大いなる創造の資質を授けられ、
そして「人間を第一に、 “ 財 ” の供給を第二に」置くような
経済体制を発展させることのできる、
独特の人間であるわれわれ自身を思い起こすことなしには、
破滅はまさに不可避であることを十分に知る
楽観論者である。(斎藤志郎訳)

 

さて、で、お前はこれからどうするんだ?

これを今年最後の一枚とします。

今年の新作で、僕が思う一番は、
酪農王国から依頼を受けた「ゆずバタークリーム」
になるだろうか。
天城の柚子に丹那牛乳のバター。
農水省の「フードアクション・ニッポン」100選にも
選ばれた。

そして、柚子の手前に置いたのが、
幻の柑橘とも呼ばれる「天城柚柑(ゆこう)」という柑橘。
エビデンスはないが、柑橘の原種だと地元では語られている。
その樹齢100年と言われる木が一本残っていて
(この年数も怪しい。「相当古い」という意味だろう)、
それをもとに苗木を増やして、耕作放棄地に植え続けている
自然農法の農家がいる。
柚子の取りまとめもしてくれている、
浅田藤二さんという方。
柚子も柚柑も、もちろん無農薬栽培である。

その浅田さんから、
このユコウをジャムにしてくれないかと依頼があった。
小っちゃくて少々手がかかる果物だったが、
試作したところ、大いに満足してくれた。
「これを地元の特産に育てて、農家を元気づけたい」
と浅田さんは嬉しそうに語ってくれた。
来年秋には本製造となる予定。

フルーツバスケットに赴任して6年。
テーマに掲げた “ 地域 ” (への貢献)が、
少しずつだけど形になり始めた、というところです。

来年はさらに地域を深く、掘っていきたいと
思っているところです。

 

以上。
12月に入っての相次ぐ訃報もあって、
いろいろと書き残してしまったけど、
それらは来年への宿題として、今回をもって
今年最後の日記とさせていただきます。

拙いブログを読んでいただいた皆様に、
深く感謝申し上げます。
ご批判も含め、反応の一つ一つに励まされました。

どうぞウィルスへの警戒を怠らず、
暖かい年末年始をお過ごしください。
2021年が、明るく希望を語れる年になりますように。
良いお年を。

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