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フランス人子供たちの森づくり体験

2020/11/13
  • 雑記その他
  • 食・農業・環境
フランス人子供たちの森づくり体験

標高235mの丹那盆地に吹く風も、
だいぶ冷ややかになってきた。

富士山の雪はまだ少ない。
積もっては溶ける、を繰り返している。
北斎の赤富士(富嶽三十六景の「凱風快晴」)くらいだ。
大好きな絵だけど、やっぱ富士は雪があるほうが美しい。
寒くなるのはちょっとつらいが。

 

さて、11月7日(土)の話。
「森林(もり)づくり伊豆の會」から動員がかかって、
手伝いに顔を出した。

日本に住むフランス人の、
ボーイズガールズスカウトの子どもたち約50人が、
中伊豆の「満城の滝キャンプ場」にキャンプにやってきて、
そのうち中等部(中学生)の子16人が、間伐の体験をするという。
その指導に人手が足りない、というメールである。

たいして役に立たない身ながら、
モノを運んだり全体の監視くらいはできるかなと、
手を挙げた。

 

午後1時、ボランティア小屋に集合。
スタッフで打ち合わせを行なう。

慣れた人たちは「あ・うん」で確認し合っているけど、
こちらは精いっぱい作業の流れを想像して、
ついていくしかない、という感じ。

ボーイズガールズスカウトの責任者である
セバスチャンさんという長身の男性がやってきて、
「ミナサン、ドウモドウモ、ヨロシクオネガイシマス。
 ハァ、ソウデスネェ、オマカセシマス。アリガトウ」
てな感じで、けっこうアバウトな気楽さを感じるも、
初心者にはかえって緊張感もまた、生まれるのだった。

 

午後1時半、子どもたちが集まってくる。
ここで日本の指導者なら「整列ゥ!」とか、ビシッと
締めたりすることが多いが、文化の違いか、
指導者も子どもたちも、そんな生真面目な雰囲気が一切ない。
パラパラと、「なんやねん」みたいな感じで集まってくる。

間伐の現場まで山道を登るときもバラバラで、
お喋りしまくったり、歌を歌ったりと、実に陽気だ。
日本の先生だと「お喋りしない!」とか叱るところだろうか。
(オラッチェに来る学校の子たちを見てると、そう思う。)
これは学校の授業じゃないからユルいのか、
僕にはよく分からない。

それでも現地に到着したところで、
指導員の女性が大声で 喝ッ!みたいに叫ぶと、
さすがに集中し始めた。態度は色々だけど。

記念撮影をして、いざ出陣。
2班に分かれて現場に分け入る。

腰に縛った二丁差し(ナタとノコを収めるケース)から、
ノコギリを出しては、日本刀を抜く真似をする子がいる。
家庭で日本の時代劇でも見ているのだろうか。
前回(去年)はナタを振り回した子がいたそうで、
今回はナタを抜いて持たせた。
ゼッタイに怪我をさせないよう、新米の見張りは気が抜けない。

 

いよいよ間伐作業の開始。
周りよりやや細いヒノキが選抜された。

ここで間伐する目的や、木の選び方、倒し方、
間伐材の使途などを説明するのだが、
つい専門用語を使ってしまって、
通訳する指導員が聞き返す場面もあった。

こういう場で普通に使っている専門用語も、
いざ噛み砕いて説明しようとすると、
すぐに言葉が出てこなかったりして、意外と難しい。

知らない人に対して、自分だったらこの用語をどう説明するかを考える。
それが理解を深める際の一つのコツなんだけど、
トレーニングできていないことを、こんな時に思い知らされる。

チェーンソーを使いたそうにする子もいたが、
さすがに危険なので、やらせられない。

木が倒れる方角に向かって「受け口」をつくる。
下を水平に切り込み、30~45度の角度で斜め切りする。
受け口の方角が曲がっていると落ちる角度がずれ、危険が伴う。
木に引っ掛かったりもするので、しっかり確認する必要がある。
それでも素人だとズレることが多いのだ。

次に反対側(追い口)から切ってゆき、
中心部10分の1くらいを「つる」として残す。

プロならそのまま一気に倒すところだが、
ここでは木の中段あたりにロープをかけて、さらに別な木を通して
ロープを迂回させて、目標の角度に落ちるよう
引っ張って倒す方法が取られている。

その引き手を、子どもたちにやってもらう。

「もっと下がって」
「もうちょっと間隔をあけて」と
日本語と手ぶりでの指示がけっこう通じて、従っている。
引く時の掛け声は、アン、ドゥ、トロヮ、だった。
チームワークは、良い。

見事、定めた方角に倒れ、歓声と拍手が起こる。

次は、ノコギリでの作業。
倒した木の枝を払って、幹の玉切りに挑戦。

ノコギリの使い方が、日本とフランスでは逆だと知らされた。
日本は引いて切るが、フランスでは押して切るんだと。
この違いはどこから来たのか・・・興味深い。

日本式のノコギリを使って、頑張る少年。
引くときに力入れる、と言われながら、やり通した。

続いて、食事のお皿用にと輪切りしたヒノキの皮をはぐ作業。
これも真剣に取り組んでいる。
気に入ったのか、何枚も抱えて持ち帰る女子もいた。

 

こうやって2本伐採したところで、体験作業の終了。
「アリガトゴザィマシタ」と森にもお礼を言って、山を下りた。

これだけの作業で、森林づくり作業の意味が
どの程度理解してもらえたのかは、よく分からない。
もしかしたら、ボーイズガールズスカウトの活動なんかを通して、
日本の子たちより学んでいるのかもしれない。

まあ、実技の感触と「楽しかった」という体感が残るだけでも
充分に意義あることだと思うけれど、そのへんのところ、
まったくコミュニケーションできないもどかしさも残った。

次に機会があったなら、もうちょっと準備して臨みたいと思う。
いやその前に、実技の腕を上げなければならないか。

 

二日後、会の代表の河合さんからメールが届く。
責任者のセバスチャンから、
お礼とキャンプの写真が送られてきた、との連絡である。

僕らはキャンプファイア用の薪を提供し、
段取りしただけで帰ったのだが、
楽しいキャンプになったとのこと。
スウェーデントーチも役に立ったようである。

セバスチャンからのお礼の言葉。

土曜日、大変お世話になりました。
子供みんな喜んでいました。
ありがとうございます。
森林づくりのみんな様、気をつけて、
よろしくお願いいたします。
Sebastien
(原文ママ)

 

ちなみにこの日、
ボランティア・スタッフのなかに消防士の方がいて、
スマホに通訳アプリを入れていることを教えてもらった。

海外での災害救助ボランティアに行った際に、
現場で必要な会話ができるよう、消防士は6ヶ国語を入れてあるという。
しかも、かなりの精度に進化してきているらしい。

そのツールを使って積極的にアプローチする彼を見て、
便利な世の中になったものだと感心したが、
ふと、逆に正しい日本語ができないと
まずいことが起きたりはしないか、とも思ったのだった。
通訳は普段の日本語を理解する人ではなく、機械だから。

そんなことを考えてしまう自分は、
優秀な通訳アプリを使っても、緊張しそうである。
関西弁でもいけるんだろうか・・・

いずれにせよ、国際人にはなれそうもないね。

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