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『大地の芸術祭』の里めぐり-③

2017/09/03
  • オイシックス
  • 食・農業・環境
『大地の芸術祭』の里めぐり-③

「食」こそ芸術である。
ー『大地の芸術祭』の総合ディレクター、
  北川フラム氏が発するテーゼの一つだ。

そもそもこの芸術祭は、
自然をバックに「芸術家」によるアート作品を並べて
観光客を呼ぶことだけが目的ではない。
過疎が進む里山、越後妻有という地域を、
アートの力をもって、新しい発想で再興させるために始まった
“プロジェクト” なのである。

ここで「食」は、
地域の風土から生まれ、土地の文化を表現するものとして
重要なテーマとなる。
食べた途端、形が目の前から消えるモノ。
しかし食べることによってしか感じ取れない “文化”。
だから北川さんは、地元の食材に徹底的にこだわり、
そこに芸術の力を注入する。
僕らがチェックすべきは、むしろこっちかもしれない。
・・・「食」こそ芸術である。

 

8月5日、昼食をとった場所は
うぶすなの家」といった。

築80年の茅葺き古民家を、陶芸の力で再建した、
宿泊もできるレストラン。
日本を代表する陶芸家の作だという
囲炉裏や竈(かまど)が出迎えてくれる。
2階には陶芸作品の展示もある。

竈(鈴木五郎作)も
実際に使っているのだという。

器も作品なら、
それに盛られた「食」もアートである。
これを五感で感じ取るのだ。

すべて地もの。
ちょっと量が多すぎると思ったのだが、
野菜中心で、味付けもしっかりとしながら優しく、
ご飯をお替わりして平らげることができた。
感想はただただ「美味い」の連続。
海原雄山のような表現力がほしい・・・
まあ、「また来なければ」と決意させた時点で勝負あり、
ということで。

風呂場もアート(澤清嗣作)。

 

もてなしてくれたお母ちゃんたち。

“おもてなし” とは特別な材料を駆使することではなく、
テクニックでもなく、心だろう。
加えて、“私を育んだ風土” (産土:うぶすな)
への愛があれば、
その愛を他者の視点で表現する力があれば
・・・何かが生まれる。
食べれば消える作品に、いのちを吹き込む。
いのちは私の身体に引き継がれる。
イメージは膨らみ続けるが、逆に
言葉が出なくなっていく。。。

 

続いてやってきたのは「光の館」。
光のアーティスト、ジェームズ・タレル作。

越後妻有の伝統的家屋をモデルにつくられた、
瞑想のためのゲストハウス。

いたるところに間接的光を取り込む工夫が施され、
可動式の屋根が開くと、四角の天井窓から
空の光が入ってくる。
寝転んで眺めれば、空が動き、光が変化していく。

宿泊できる部屋は3室、定員12名。
部屋の割り当ては、客同士で話し合って決める
というルールだそうだ。

 

次。
絵本作家・田島征三監修による
絵本と木の実の美術館」。

地元の子たち(?)が出迎えてくれた。

12年前に廃校になった元小学校が、
「空間絵本」美術館として蘇った。
流木のオブジェと木の実たちが踊り、
教室を移動するたびに物語が展開していく。

校舎に長年棲んでいるという
思い出を食べるお化け、トペラトト。

トペラトトが食べた思い出は、
ずっと消えないんだとか。

思い出がいっぱい詰まった学校は、
カラッポにならない。。。

空間絵本の余韻に浸りながらゆったりと過ごす時間・・・
とパンフレットには書かれているが、
そんな時間はなく、我々は次に向かう。

 

「里山協働機構」活動の拠点である
まつだい農舞台」に到着。

「都市と農村の交換」をテーマに、
地域の資源を発掘し発信する総合文化施設。
オランダの建築家グループが設計し、
ホールにギャラリー、食堂、ショップなどが入っている。
各部屋からトイレまで、すべてアートという徹底ぶり。

ここで夕方から、
トークショーとライブが開かれた。

トークショーは、
総合ディレクターの北川フラムさん(下の写真・中央)と
音楽プロデューサー・小林武史さん(同・右)。
進行役はオイシックス代表の高島宏平さんが務めた。
ここでは協働機構副理事として、か。

小林武史さんは紹介不要かと思うが、
大地を守る会とは、つま恋での「ap bank fes」や、
彼が手がける食・農業ビジネスでお付き合いがある。
僕も外苑前のショップ「food kurkku(クルック)」や
千葉・木更津の農場「耕す 木更津農場」には、
仕事で何度かお邪魔したことがあった。
ただ本人を拝見するのはこれが初めて。

もうおひと方の北川フラムさん。
何を隠そう、今回参加した本音の目論見の一つは、
この方と会うことだった。

まだ若い頃、しかも大地を守る会に入社する前、
僕はこの人の名前を水俣病に関わる中で知った。

「原爆の図」で有名な画家、丸木位里・俊夫妻が、
大作「水俣の図」を描いて、
その制作過程を撮った映画「水俣の図・物語」が
土本典明監督によって作られ、
その完成記念のシンポジウムが、池袋で
9日間にわたって繰り広げられた。
1981年4月のことだ。
錚々たるメンバーが集められていた。
その総合企画者が北川フラムという変わった名前の方だった。
本名である。

その記録集は、今も本棚に
しっかりと位置取りして立っている。

「表現に力ありや」。
北川さんの名は、このあとさらにビッグになっていくのだが、
ずっとこの問いを問い続けているのだと、
僕は勝手に解釈しているのである。

夜の懇親会で、北川さんから、
“アートを媒介にした新しい里山構想” のプランが
紹介された。
そこでコメントを求められたのだが、
どうにも頭の中が整理できず、
断片的なことしか喋れなかった。
北川さんに見つめられて、いささか緊張してしまったか。。。

このままじゃあ、次に合わせる顔がない。
このレポートを続けながら、今ようやく、
いくつかのプランがまとまりつつある。
出来不出来はともかくも、
貴重な機会をいただいた者の仁義として、
ちゃんと提出しなければならないと思っている。

何だか、、、終わらないね、この報告。
すみません。あと一回、いや2回になるか・・・

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