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種子(たね)を守る

2017/07/06
  • 食・農業・環境
種子(たね)を守る

九州北部を襲った集中豪雨が尋常じゃないですね。
まだ予断を許さない状況ですが、
被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。

豪雨被害ニュースに目を奪われつつ、
以下のレポートを。

 

7月3日(月)。
大地を守る会本社(千葉・幕張)で会議に出た後、
永田町まで足を延ばして、
「日本の種子(たね)を守る会設立総会」に参加した。
場所は参議院議員会館・講堂。

食と農、つまり暮らしの土台を揺るがす問題が起きている。
しかもあっという間に事態が動いたのだ。
今の仕事とは直接的には関係ないようだけど、
そんなことはないぞ。
これはやっぱ看過できない。

主要農産物種子法(以下、種子法)が、
来年3月末に廃止されることが決まった。
今年3月23日の衆議院農林水産委員会で
たった5時間審議されただけで即日採択され、
28日に衆議院を通過した。
参議院の委員会でも5時間の審議と2時間の参考人質疑を経て、
4月14日に本会議で可決となった。
本当に、エッ? あれ、エェ~! みたいな感じ。

そこで急きょ、山田正彦さん(元農林水産大臣)や
金子美登さん(全国有機農業推進協議会理事長)などが
発起人となって「日本の種子(たね)を守る会」の設立が
準備され、この日の設立総会へと至った。

 

会場に詰め掛けた人およそ300から400。
ちょっと遅れて入ったところ、椅子はすべて埋まっていた。

種子法がつくられたのは、
戦後の混乱期を経た1952年のこと。
国の重要な主要農作物について、
その優良な種子の生産(そのための圃場管理を含む)と
普及(安定供給)を目的として制定された。
ここでの主要農産物とは米・麦・大豆であり、
これら主要農産物の種子(遺伝資源)を育成・管理し、
安定的に農家に供給することは
国および都道府県の役割と定められた。

この法律のもとで各都道府県は、
地域の特性に合った品種を開発しては、
その保護と発展に努めてきた。結果として
国内で生産される米の種子は100%自給を維持し、
消費者にとっては
多様な品種の米を楽しむことができている。

それがいま、「民間企業の参入を阻害している」
との理由で廃止が決定された。
アベノミクス農政のレトリック的合い言葉、
「岩盤規制の緩和・撤廃で競争力を強化する」
の一環である。
奇襲攻撃のように見えるが、その内実は
廃止に賛成した先生たちも深く意味を考えず、
“右にならえ~” しちゃったんじゃないか。
だとすれば、まさに
政治の劣化を象徴する出来事にも見えてくる。

「種子」とは何か。
インドの物理学者で環境思想家でもある
ヴァンダナ・シヴァ博士の言葉を借りれば、こうだ。

種子は単に将来の作物と食糧の源ではなく、
文化と歴史の貯蔵庫なのである。
種子は食物連鎖を形成する最初の環である。
種子は食糧安全保障における究極のシンボルなのだ。
(『食糧テロリズム』から)

だからこそ、どの国も、主要作物の種子政策
(遺伝資源の管理、品種改良、種子の安定供給と流通の適正化)
は、農業政策の根幹として、したたかに守ってきたのだ。

そもそも民間企業の参入は、現行の種子法でも
認められていることであり、廃止の理由にはならない。

民間の参入が厳しいのは、法的規制の問題ではない。
種子の開発(改良から安定まで)とは恐ろしくコストのかかるものであり、
過去には数々の民間会社が挑んでは失敗してきた。
それによって倒産した事例も累々としてある。
むしろ自由競争に丸投げしては、
価格と供給の安定性は損なわれる、と考えるべきである。

公共政策として種子を守ってきた制度を撤廃すれば
国の競争力が増す、とは国民を欺くデマだ。
貴重な遺伝資源の保護・育成という責任を国が放棄することで、
民間に種子や技術が移行した場合、
待っているのは “自由競争” という名の
多国籍企業による種子支配ではないか。
やっぱり背後に潜む影を見てしまう・・・

種子(たね)の多様性も失われていくだろう。
それは暮らしの安定性を失っていくことを意味する。
“自由貿易” という宗教に、国は主権まで預けようとしている。
勝利するのは農民でも消費者でもなく、
「ビジネス」による支配である。

言い過ぎでしょうか。

ここでも登場。会場から吠える、
さんぶ野菜ネットワークの下山久信さん。
気合入ってるよ。

これまでの種子法にも、問題はないわけではない。
廃止が決定されたんだったら、
ここで改めて、国の役割、地方自治体の役割、そして
民間事業者の役割を議論して、
新しい種子法をみんなの力でつくろうではないか。。。

かくして、新しい運動が発足した。
新しい種子法の制定。
これは国民主権を賭けたたたかいである、と。
皮肉を込めて、
「美しい日本を取り戻す」
とでも言ってみたらどうだろう。

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