ミツバチになろう

道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」がオープンして、
物産館での売り上げが日々メールで送られてくる。
好調なのが「手むきみかんジュース」だ。
販売は委託なので手はかからないが、
毎日誰かが補充に走るという想定以上の出だしで、
ちょっとほくそ笑んだりしている。
問題は連休後の動きではあるけど。

 

その道の駅の近くで、
レンゲ畑を発見した。

レンゲを見ると、
大地を守る会の「稲作体験」田んぼを想い出す。
素人仕込みの知恵で、
有機栽培でのコメ作りに、何度か試したことがあった。

マメ科植物の根に着く根粒菌は、
空気中の窒素を取り込む(窒素固定)力がある。
原価や資源の持続可能性を考えれば、
石油に頼る化学肥料より、間違いなく生産性は高い。
作業だって、ばら蒔きでよいし。

初めてトライした時、
稲刈りを終えた田んぼで、
これで窒素肥料はいらなくなります・・・
などと偉そうに喋って、
会員さんたちと一緒に蒔いて、解散した。
「春にはレンゲ畑が見れますよ~」と、
来年も来てもらう狙いもあってのことだった。

しかし2年続けて大勢で蒔いたせいか、
3年後のイネの葉が異様に深い緑色になった。
たしかあの年は、食味も落ちたような・・・
地主の佐藤秀雄さんから、
「レンゲやり過ぎだっぺよ」と優しく諭された。
それでもコメは立派に実ったのだ、
無農薬無化学肥料で。

その後も何度か、間をおいては試した。
余ったレンゲの種は会員にあげたりした。
レンゲの花畑があちこちに増えないかと思って。

 

近づいて、じっと眺めているとやがて、
たくさんのミツバチの存在が見えてくる。

田んぼは自然の改造から始まったが、
水田という装置は実に見事なもので、
水の力によって半永久的にコメの連作が可能となり、
かつ湿地を誕生させることで、
水生生物からそれを餌とする動物までの
食物連鎖、つまり生態系が生まれる。
秋には鳥たちの餌場ともなり、
春にはこうやってハチミツの原料供給基地にもなる。

「里山」という場所もそうだ。
人の手が適度に加わることで、
単一植物種が場を独占することを防ぎ、
結果として生物多様性が高まる。
これを「中規模かく乱説」という。

一面的な経済尺度によって、
自然と共生してきた暮らしの知恵が滅ぼされ、
結果、風景(=自然資源)が痩せていく。
「近代化」の名のもとに、本当は貧しく
非経済な社会に向かって歩んできたんだとしたら、
感傷ではすまない話ではないか。

田んぼは、ただのコメの生産手段ではない。
基本食料である穀物を生産するだけでなく、
副産物として藁や籾といった資材を供給し、
たくさんの生き物を育み
(生物多様性は生産の安定性の土台でもある)、
安全なハチミツ原料まで無償でプレゼントできる、
多様な資源を生み出すフィールドなのである。

その総合的生産力を考慮する経済学者は、
皆無に近い。
“コメの生産性” という単一の指標だけで
存在価値をはかるのは、知恵のない人間の思考だ。
実はエネルギー(燃料)だって
作ることができるのだ。

減反政策の時代はようやく終焉するが、
次がただの自由競争というのは、あまりに寂しい。
もっと豊かな発想を持って臨みたいものだと、
レンゲの花を眺めながら思うのだった。

 

「革命兵士とは何でしょうか?」
と若者から問われ、
キューバの革命家、エルネスト・チェ・ゲバラは、
こう答えた。
「農民が花で、オレたちはミツバチだ」

ミツバチになろう、みんなで。

行けなくなって3年になるが、
今年も千葉・さんぶでの「稲作体験」が
楽しく、充実したものになるよう祈る。

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