夢をつなぐ「りんごシードル」を

公開日: : 最終更新日:2015/03/04 日々日々フルーツバスケット, 生産者・産地情報

2月14日(土)から15日(日)、
冬の福島を訪ねてきた。
と言っても福島は広い。
大平洋側の浜通りと、新潟の山間部に近い会津では
気候風土も文化もまったく違う。
福島をひと言で括ってはいけない。

今回の主たる目的は、
今年で19回目を迎えた会津・喜多方での
「大和川酒造交流会」に参加するためだったのだが、
どうしても立ち寄りたい場所があり、郡山から西に向かわずに、
東北本線を北上して二本松駅に降りた。

訪ねたのは、二本松市東和地区にある
「ふくしま農家の夢ワイン株式会社」。
2012年9月に、福島の農業の復興を目指して、
生産者たちが立ち上げたワイン醸造所。
設立メンバーの一人に、大地を守る会がリンゴで契約している
「羽山園芸組合」の熊谷耕一さんがいて、
今ここで働いているイケメンの息子、耕平さんが
駅まで迎えに来てくれた。

ふくしま夢ワイン➀

建物は昔の共同稚蚕飼育所を皆の手で改造したもの。
最初は「どぶろく特区」を目指していたのだが、
耕作放棄地の解消と若い女性をターゲットにしようと、
ブドウ栽培から始めてワインをつくる、という話に発展した。
震災(原発事故)前のことである。

震災による被害は「大したことはなかった」(生産者の弁)。
瓦が落ちたり、畑の一部が崩壊した程度で済んだ、と。
浪江方面から避難してきた大量の人たちを受け入れ、
炊き出しなどで懸命にもてなした東和の人たちにしてみれば、
そうなんだろう。

しかし原発事故はあまりにも非情だった。
深い「絶望」という境地が一人一人の胸に迫ったに違いない。
自ら命を絶った人もいる。

それでもへこたれず、前を向いて歩けたのは、
やっぱ仲間の存在だったと思う。
しかも、それは地域の仲間だけではなかった。
震災の直後に、前年の秋に視察した白沢村(現本宮市)の農場から、
頼んでいたブドウの苗木が届いたのだ。
2011年3月、手を挙げた会員に苗木を配り、
定植作業が始まった。
耕作が放棄された桑園などを甦らせる計画を、
予定通り彼らは決行したのだった。

ふくしま夢ワイン②

2011年11月、20戸の農家で
「東和果実酒研究会」を結成。
翌12年3月、ワイン特区として認定される。
そして9月、8人の出資によって
「ふくしま農家の夢ワイン株式会社」が設立された。

2013年4月、初仕込み。
それはブドウではなくて、リンゴだった。
原発事故の影響によって売り切れなくなった「羽山りんご」。
熊谷さんたち「羽山園芸組合」もその冬、
ユンボで土を掘って、20トンのリンゴを埋めた。
その時の思いは・・・僕には語る資格がない。

ふくしま夢ワイン④
(醸造所内を案内してくれる熊谷耕一さん。ピンボケでスミマセン。)

 

2013年7月、待ちに待ったリンゴの果実酒
「シードル」が完成する。
爽やかで甘さ控えめ、酸味と渋みのバランスよく、
実に飲みやすい(アルコール度数8%)。
目論んだ通り、女性にウケる果実酒が出来上がった。

ふくしま夢ワイン⑥

写真の右は、早摘み(実の間引き)した青リンゴを
使った「グリーンシードル」。
贈答用の化粧箱もつくられて、いい感じだね。

ふくしま夢ワイン⑦

夢ワインを訪ねたのは、他でもない。
大地を守る会でこのシードルの販売が決定したのだ。
2年前から熊谷さんから頼まれて、
決意だけで受けた約束を、ようやっと果たすことができる。
その報告と打ち合わせを兼ねての訪問となり、
少しは喜んでもらえたんじゃないかと思う。

 

醸造所の会議室には、「あぶくま農と暮らし塾」と
大書された横断幕が貼られてあった。

ふくしま夢ワイン⑤

「ふくしま農家の夢ワイン」。
地域の再興をかけた拠点であり、学び舎でもある。
ここから始める、の気合がこもっている。

2013年の秋には、震災直後に植えたワイン用ブドウ
「ヤマ・ソービニオン」の収穫も始まった。
今では12種類のブドウが植えられ、その数2千本に達した。
農薬散布は、これまでない。無農薬栽培のワインである。
一時は荒れた農地が蘇り、若者たちの入植もあとを絶たず、
新たな夢も広がっている。

ふくしま夢ワイン③

短い訪問だったが、帰りがけに急いで一枚。
これまたピンボケで大失敗。
おかしいなあ、合ってると思ったのに・・・ヤバいね。
写真右の二人が熊谷親子。
手前左が代表の斎藤誠治さん。
後ろの若者は農家の倅たち。しっかり後継者も育てている。

帰ろうとする背中に、
「生産が安定してきたら、ワインもお願いしますよ」
との声がかけられ、またも決意表明。終わんないね・・・

大地を守る会でのシードルの取り扱いは
3月下旬か、4月になるか・・。
まずはネット(WEBストア)のみでの販売となるけど、
登場が待ち遠しい。

捨てられる運命にあったりんごたちの涙と、
未来への夢が詰まったりんごシードル。
多くの方に飲んでいただけることを願ってやまない。

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