人の心に木を植える(続き)

公開日: : 最終更新日:2015/01/27 大地を守る会, 食・農業・環境

畠山重篤さんの話を続けます。

すべての生命活動の根源を遡れば、
植物の、正確には葉緑体による光合成に辿りつく。
太陽エネルギーの力によってCO2を吸収し、
水とCO2から炭水化物を合成して、酸素を放出(空間に供給)する。
その植物の身体そのものと機能によって、
この星の動物たちを支えている。

そこで畠山さんは、重要な物質の存在を説く。
環境問題では厄介者とか言われているCO2を
C(炭素)とO(酸素)に切り分け、
生命を支える素としてくれているのが葉緑体なのだが、
葉緑素クロロフィルが働くには、
鉄(Fe)という成分が必要なんですよ、ということだ。
前回書いた珪藻類は光合成を行なう独立栄養物だが、
そこにも多数の葉緑体が存在する。

植物を育ているのに必要な三大成分として窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)
が挙げられるが(有機農業ではさらに微量要素の重要性が説かれる)、
たとえばNは水に溶けると硝酸イオン(硝酸塩)となって、それを
吸収できる形に戻す(還元する)にも、鉄のはたらきが必要となる。

鉄は酸素に触れると酸化鉄となる(錆びる)。
錆びた鉄は使えない(吸収できない)。
しかし自然の循環の中では、不断に鉄が供給されている。
それはどのような仕組み、作用によるものなのか。

この仕組みを解くのが、腐葉土から生まれるフルボ酸である。
腐葉土とは、樹々の枯葉の堆積物でできた土(的状態)である。
樹々(森)がたくさんの葉を落とし、土が形成されていく。
積もり続ける中でだんだんと下層土は酸欠状態となり、
鉄が溶けだしてくる。
その鉄をつかまえるのがフルボ酸である。
フルボ酸はとてもキレート力が強く
(キレート=ギリシャ語でカニの鋏。つかみ込んで安定な状態にする力)、
フルボ酸と鉄がくっついて「フルボ酸鉄」となると、
もはや酸素は鉄に合体できなくなる。
しかもフルボ酸鉄は、水に浮遊して動く。
まさに、鉄の運び人が森から生まれていたということなのだ。

 

20150118畠山講演会④

畠山さんによれば、
太陽系の中で一番多い成分は鉄分なのだという。
地球の重量の3分の1は鉄であり、鉄があったからこそ植物が生まれた。
「地球は、水の惑星の前に、鉄の惑星なのです。」

日本列島には3万5千本(一級・二級河川だけだと2万1千本)
の川が流れている。
縦に長い日本列島の背骨を構成する山脈から
フルボ酸鉄が営々と供給され続けてきたのだが、
それを分断してきたのがこの半世紀の歴史である。。。

ここまで来ると、もう答えは見えたようなものか。
持続可能な未来は、どのような営みによって取り戻せるのか。
「日本の未来像を描き直すグランドデザインが必要です。」

 

20150118畠山講演会③

森は海の恋人運動に触発されて、
京都大学で「森里海連関学」が生まれた。
畠山さんは教授として大学で教鞭をとるまでになった。
そして若者が育ってきている。
今回の講演会を開催するにあたり、
大地を守る会の全専門委員会合同でやりたいとこだわったのも、
つながりが必要だと思ったからだった。
我々もまた、組織を進化させなければならない。

畠山さんは優れたマーケティング論者でもある。
日本で生産されている海苔は90億枚。
そのうちの30億枚がコンビニのおにぎりに回っている。
おにぎりの数にして60億個。
これはコメの消費量の15%に相当する。
海の生産物とコメの消費はモロに関係している。
(農家も海苔の生産現場を思え、と言うことだ。)

ご飯のおかずが減っていく(=高くなっていく)とコメの消費は減る。
シジミやアサリが安価に大衆に供給されることで
コメの消費は維持され、国民の健康も維持される。
コメの消費が減っていると農家は嘆くが、
ずっと川や流域をいじめてきたのは誰だったのか。
森里海のつながりを守ることで、
安い寿司だって食べられるのだ。
コメを考えるなら、おかずも考えよう。

日本列島に莫大な量のフルボ酸鉄を供給してくれている
アムール川流域をどうか保全してほしいと、ロシア人に頭を下げたらねぇ、
日本人はどんな活動をしているんですか、と聞かれたんですよ。
どうします、皆さん・・・

 

僕らは世界とつながらなければならない。
しかしその前に、地域を見直す作業も必要だってことだ。

《あなたの街に、落合直文や熊谷龍子は存在している。
何とかしたいと思っているミニ畠山も。 》

これが畠山さんからの、今日のメッセージたと受け止めた。
この歩みの向こうに、平和もまたあるんだと思う。
歩きたい。
たとえ夢のような社会は実現できなくても、だ。

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