「有機農業は “ 生き方 ” だ」-小林芳正さんを悼む

公開日: : 最終更新日:2022/07/18 あんしんはしんどい日記, 生産者・産地情報, 米プロジェクト21

続いて、竹材活用の新たな可能性を探って
静岡市まで出向いた話を書こうと思っていたところ、
7月6日(水)の昼過ぎ、
大和川酒造店の佐藤和典さん(6月まで社長、現在顧問)
から携帯に電話が入り、「小林芳正さんが今朝方亡くなった」
との知らせが入った。

エッ! という驚きの次に、あぁ~‥ のため息が出る。
間に合わなかったか・・・の無念さとともに。

有機農業運動のカリスマがまた一人、逝ってしまった。。。。

 

僕が小林芳正さん(元福島県熱塩加納村農協・営農指導部長)と
最後にあったのは、大病を患った後、
復活して元気になられた2013年の9月だった。

僕も参画した「地域の力フォーラム」の取材に同行した時だ。
結局、お会いしたのはあれが最後となった。

 

7月10日(日)、喜多方で行われた告別式に参列する。

有機農業は「生き方」だ。

これが小林芳正さんの教えである。
有機農業とは、農薬・化学肥料を使わないという、
たんなる農業技術ではない。
ましてや農林水産省が言うような
「高付加価値」農産物という概念で語るものでもない
(小林さんはそれを特に蔑視していた)。

地域を愛し、美しい村を育てる。
(「美しい村」はそこにあるのではない、人が作るのだ」とは
  民俗学者・柳田國男の言葉である。)
子どもたちを健やかに育てる(未来の)ために、
安全で美味しい食べ物を作るのが我々農民の義務であって、
そこには不要な化学物質の使用は極力避けなければならない。。。

 

農薬や化学肥料も売る農協の、営農指導の立場でありながら、
「農薬は撒くな」と伝導し、自らも先頭に立って実践した。

そうして作られた農産物を、地元の学校給食にも提供した。
熱塩加納小学校の「地元有機農産物を使った学校給食」は、
全国の先駆け的取り組みとして名を馳せた。

今でも覚えている、29年前(1993年)のこと。
初めて熱塩加納村を訪ねた時だ。
優しくも強い目線で僕を見据えて言った、ひと言。
「今ではこの村の田んぼ、見渡す限り、
 (初期除草剤1回を除き)農薬を撒く光景は見られない」

限られた有機農業者のたたかいではなく、
村全体で取り組んでこその有機農業、それが彼の矜持(きょうじ)だった。

大地を守る会オリジナル純米酒の開発に取り組んだその年は、
“ 平成の米パニック ” とも呼ばれる歴史的大冷害となり、
須賀川市・稲田稲作研究会の酒米「五百万石」も、大打撃を受けた。

お酒の開発を断念しかけた時に、
「せっかくここまできた企画だ。オレの米を使え」と
手を差し伸べてくれたのが芳正さんだった。
あの、米が高く売れた年に・・・
僕はこのご恩をゼッタイに忘れないと誓った。

『夢醸』(現『種蒔人』)は、人のつながりの中で育ってきた。
本当にシアワセな酒だと思う。

 

冒頭書いた「間に合わなかったか・・・」の意味は、
実は、カメラをこよなく愛し、
熱塩加納村の風景や村人たちの姿を撮り続けた芳正さんの
写真集を、「ご存命のうちに」出版させようと
準備を進め始めた矢先、だったのである。

6月から顧問となった佐藤和典元社長から打診があり、
ジェイラップ(原料米生産者)会長・伊藤俊彦さんとも協議して、
「種蒔人基金」から制作費用を出すことも決めていた。
無念・・としか言いようがない。

 

告別式は朝9時からという時間だったので、
前日の夜に喜多方に入ったところ、
彌右衛門さんから呼び出しがかかった。

山都の浅見彰宏さんまで呼び出して、3人で一献傾け、
「もう一軒行こう」~ と引きずり回され、
3軒めのカラオケ・スナックで、彌右衛門さんは
「小林芳正がいつも歌っていた曲だ」と2曲歌って、泣いた。

「長崎の鐘」と「ラブ・イズ・オーバー」だった。

弔辞は、二日酔いの彌右衛門さんが詠んだ。

地元の米にこだわって、地域を育ててこそ会津の地酒屋であろうと、
酒蔵の「生き方」をも変えさせた哲人だった。
しかも自ら、酒造好適米「山田錦」の栽培にも挑戦した。
西南の晩生(おくて)の米を、雪が舞う中で収穫したという
伝説も残っている。
他所(よそ)から原料買ってきて品評会に出したりするんじゃない。
地元で育てた米で日本一の酒を造るんだと・・・

その米で数年後、ついに大和川酒造店は全国新酒鑑評会で金賞を受賞した。
僕の知るところ、当地は今でも「山田錦」栽培の北限のはずである。

芳正さん。
写真集は、必ず届けます。

合掌。

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