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後に引けなくなった「メンマ」開発

2022/06/19
  • あんしんはしんどい日記
  • 竹林再生
後に引けなくなった「メンマ」開発

僕の天ぷらアリ地獄は、山菜の季節とともに終わった。
かき揚げがどうしてもキレイにできなかった悔しさとともに。。。

 

ま、そんな自分話は置いといて、
ワタクシを天ぷら三昧に誘(いざな)ってくれた
山口英昭さんの竹林にご案内しなければ。

 

鬱蒼として暗くなった竹林が増え続ける中、こちらは
陽も入っていて、キレイな竹林である。

「傘をさして歩けるくらいに-」というのが、
昔から言われてきた管理のポイントなんだそうだ。

しかし所有する山も数ケ所に分かれていて、
なかなか管理し切れなくなってきた。
山に登り、伐って、降ろす作業は重労働だし、
何より、春のタケノコ以外はお金にならなくなってしまった。

「オレもいつまでやれるか」と、山口さんは笑う。
それでも、体が動く間はイイ竹林を残しておきたいと思っている。

聞けば、元々は農家の生まれではなく、
若い頃は国鉄(現JR東日本)に勤めていたんだそうだ。
電車を走らせながら労働運動もやったと、懐かしそうに語り出した。

「そういえば国労、動労って強い労組がありましたね」 と水を向ければ、
「動労は革マルだ」 と吐き捨てるような反応。
かなりやったクチとお見受けした。

  運動することで給料も上がるし、
  みんなの意見が会社に通ったりするし、
  社会をよくすることもできるんだ。
  だけど今の若い人はできねえんだな、そういうことが。

  はい。給料上げてやれと総理大臣が言う時代ですからね。

  まったくだ。

竹の話より弾みそうだったので、それくらいにして、
竹やぶを眺める。

間伐の作業では、地面すれすれに伐るのではなくて、
幹を数10センチ残して伐る。
そうするとやがて地下茎まで枯れてくれる(増えなくなる)、
とかいろいろと説明してくれる。

しかし間伐しても、使い道がない。
わざわざ下までおろしてもしょうがない。
こうやって放置するしかなくなる。

炭を焼いたらしい跡があるのは、
竹を伐らせてくれと言ってくるグループが御殿場にあって、
好きに伐らせているんだそうだ。
彼らが面白半分で竹炭でもつくったんだろうと。

竹のいろんな用途や価値を知っている人は、結構いるのである。

 

タケノコ掘りも見せてもらう。

根元の紫色のプチプチの部分が2~3列きれいに残るように
鍬を入れるのがコツだと教わる。

僕もやらせてもらう。
実は子供のころ、母の実家(徳島県)の裏山に竹林があって、
何度かタケノコ掘りを体験したことがある。
小学生低学年の、遠い遠い昔のことだけれど、
コツは覚えているつもりだった。 が・・・

「ああ、これは商品にはならね。自家用だな」
と笑われてしまった。

 

メンマ用には伸びてきた(人の背丈くらいまでの)若竹を使うが、
まだ少し早かったようで、見当たらなかった。

昨年は試作品にガリガリしたのが残ってしまったので、
今年は伐る方法をもう少し細かく指定させていただいたのだが、
山口さんはすでに承知していて、
「今年は何としても完成させたいので-」とお願いすれば、
「ちゃんと揃えて出してやるよ」と頼もしい答えが返ってきた。

 

所々に乱暴に掘られた穴があって、
聞けば、イノシシが掘った跡だという。

フンも発見。

奴らは一番いい時に来て、いいモノばかりを食べていく。
人の気配が消えていくに連れて、彼らは下に降りてくる。
里山の荒廃と獣害の増加は逆比例の関係で進み、
すでに大きな社会課題になっているけれど、
答えは「人」にしかない。

 

タケノコを集荷する農協(丹那牛乳)の担当者によると、
かつて数十人いたタケノコ出荷者は、
もう10人に満たなくなっている。
しかも平均年齢が70代後半である。
荒れていくのも、悲しいながら、宜(むべ)なるかな、である。
誰も生産者(竹林所有者)の責任にはできないだろう。

かつて様々な形で生活全般に利用されてきた竹が、
ほぼプラスチックに取って代わられたところで、
今度はプラスチックが悪者にされるようになった。
これはいったい誰のせいなのか?
発明されたプラスチック自体が悪いわけではない。
問題は「人」と「社会」である。 答えは複雑に絡み合っている。

すべてを元に戻すのは不可能だけれども、
できることは色々とある。

極めてニッチな商品である「メンマ」の開発もまた、
そのなかのひとつの、ささやかな提案である。
しかしそれも、竹林を守る「人」がいなければならない。
「人をつなげる」素材になれば、成功である。

 

山口さんに案内された竹林からの帰り道、
祠があったので、手を合わせた。
地元の人が手入れを欠かさない道祖神は、敵に回してはいけない。

 

さてその後-
タケノコおよびメンマ用幼竹の収穫-集荷は5月で終了し、
蓋を開けてみれば、なんと昨年の倍近い量のメンマ原料が
農協に届けられたとの報告である。

これも期待の表れだと思うと、もう後には引けない。
頂いた水煮も食べまくってしまったし・・・
やるしかない。

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