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南伊豆を回る

2020/11/08
  • 生産者・産地情報
南伊豆を回る

新型コロナのクラスターが全国的に拡大している。
どうやら「第3派」らしい。
函南町でも、ついに感染者が発生した。
どうか排除やいじめなど、差別の起きない町であってほしい。

アメリカ大統領選では、ついにバイデン氏の勝利が確定した。
「青でも赤でもなく、我々は皆アメリカ人だ!」
と結束を呼び掛けるも、
トランプ氏および熱狂的支持者は敗北を認めず、
どうも分断は収まりそうにない。

それにしても体制のトップである現職の大統領が、
最初から選挙の不正を証拠もなく叫び続けるなんて、
あり得るのだろうか。
守るべき国民を端(はな)から信じない国家元首。
そんな姿を毎日、露骨に見せつけられている我々。不幸だね。

「肉屋を支持する豚」 という言葉があるのを知った。
「自分を殺す相手を信じる愚か者」 的な意味で、
最初は、サブカルの表現規制を進めようとする自民党に
投票するアニメ・オタクを揶揄して使われたらしい。

それがいまネットでは、トランプ派、バイデン派、
どちらに対しても使われている。
わたし的には 「ブタこそ抗議する権利がある!」 と
叫びたいところだが、
ここは冷静を努め(喧騒に便乗しないよう)、
自身の判断を分析する意識を心がけたいと思う。
他国を批評できるほどの国か、という自嘲も踏まえて。

18歳のグレタ・トゥンベリさんも言っている。
  -「落ち着け! トランプ」。
本当は、「落ち着け! トランプ支持者」とも
言いたかったんじゃないか。

 

さて、前回の続き。
10月29日、大地を守る会農産担当・市川と僕は、
中伊豆のわさび生産者「たか惣」さんを訪ね、
わさび田を見て回った後、
浄蓮の滝で一回休憩を挟んでから天城峠を越え、
河津町を通過し、下田に入った。

宿に着いたところで、「南伊豆水産株式会社」 の跡取り、
伊藤佳秀(よしひで)さんと会う。

今年6月に社長に就任したばかりの佳秀さんとは
初対面である。
ご挨拶し、近況など情報交換する。

「南伊豆水産」 の名が示す通り、
本業は水産加工品を取り扱う会社だが、
南伊豆地域の無農薬・減農薬の農家をとりまとめて、
大地を守る会や生協などに卸す役割を、長く果たしてきた。

佳秀さん(45歳)は、
東京で青果物の販売に携わった後、
浜松で農業を始めて7年になる。
徐々に規模を大きくしてきたところなのに、
創業者である父の健一さん(82歳)が突然
「引退宣言」して、次男の佳秀さんを指名したことで、
代表を継がされることになった、という事情だ。

「あとはお前がやれ」と、
かなり一方的な引導だったようだ。

佳秀さんとしても、浜松の農場にも
すでにスタッフを抱えている。
その苦労はハンパじゃないはずだ。
しかしここに生産者がいる以上、
引き受けるしかないと思ったんだろう。

来年1月からは、浜松はアメリカ帰りの兄に任せて
しばらく南伊豆に常駐すると言う。
佳秀さんに新しい風を期待したいところである。

その後、健一さんは経営には一切口をはさまず、
今や釣り三昧のご隠居生活らしい。
なかなか・・・
そのうち、こっそり会いに行こうかと思う。

 

翌30日(金)、
佳秀さんの案内で、朝から柑橘の生産者を訪ねて回る。

浜松での農作業が続いたこともあって、
佳秀さんはまだ、ここでのリーダー数人としか会えてない。
「生産者全員の顔が見えてないんですよ~」
と焦り気味に語る。
なので途中、生産者に道を尋ねたりしている。
仕入担当・市川は、ニヤニヤしながら見守っている。

 

数少ない若手農家の一人、島崎孝行さん(50歳)。
レモンのほ場を見せていただく。

写真右が島崎さん、そして伊藤佳秀さん、
真ん中にいるのが市川、僕の後輩(ほぼ同期だけど)。

歩く道々で、イノシシが掘った穴とか崩れた崖とかを見る。
シカの害もあって、若い木は一本一本、
鉄柵で防御してある。

それでも、はみ出した枝の葉や実は食われる。

手入れしているように見える山も、
獣害とのたたかいである。

佳秀さんは、生産者を集めて
獣害対策の講習会を企画している。
しかし何となく、生産者の反応はイマイチな印象である。
それは諦めではなく、「専門家」の知見には期待してない、
といった空気のように感じた。

悩みは獣害だけではない。
柑橘は虫や病気とのたたかいでもある。

レモンに付いた黒点病。

多少は許されると言われても、生産者としては、
やっぱ見た目に悪いと思ったものは、はじく。
そして事務局(佳秀さん)からは
「加工用なら、どの程度まで受けられますか」
の質問となる。

可能な限り受けたいと思うが、いざ具体的な話となると、
収穫ー集荷から運賃までの手間(コスト)に
効率的な量の確保、そして製品価格とのせめぎ合いがある。
それをじりじりと詰めて、形にできるかは、
これから僕と佳秀さんの、その後ろにいる生産者との、
関係づくりにかかっている。

山の上のほうの畑は獣害がひどいので諦めたと、
淡々と語る島崎さん。
これからも頑張ってほしい、と言うからには
こちらも引き受ける覚悟がいる、ということだ。

 

サラリーマンから帰ってきて5年という
飯田健二さん(48歳)。貴重な後継者の一人だ。

福原オレンジと「しらぬい」(デコポン)の畑で
話を伺う。

今年は7月の長雨で収量はよくない。
福原は隔年結果(一年おきに豊作と不作が繰り返される)
が激しい、天牛(カミキリムシ、テッポウムシとも)の
被害にも悩まされる、等々。

大地・市川に対しては農薬散布の相談、
というか訴えも、なされる。
かけてよいもの、ダメなもの・・・悩ましい会話が
行われるのである。

息子が帰って来て、お父さんは嬉しいに決まっているが、
未来への不安は消えてない。きっと。

甘夏、ニューサマー、清見、しらぬい、福原、
黄金柑(湘南ゴールドとも)、セミノール、夏ミカン、
はるか、はるみ、伊予柑、ネーブル・・・

温州みかんが終わったあとの、柑橘の数々。
どうやって守っていくか、あるは選択・更新していくか、
何より山間地の農業をどう活性化するか、
しかもこの地は物流的不利さも伴う、、、悩みは尽きない。

南伊豆には若い就農者もやってくるが、
柑橘には手を出さないと言う。
そのくせ経営がうまくいかず、去る者が多い。

畑はある。しかし課題も多い。
この問題は、ITでは解決できない。

ただ、目の前にある「悩み」は、もしかしたら
とんでもない機会=宝物でもあるのではないか。
足りないのは何か・・・諦めず、考え続けたい。

誰か、来ないか!

 

正品で出せないものは、面倒だから
そのまま落として(捨てて)いると語る、磯谷さん。

加工用で出せるかは、労力と価格の兼ね合いだと。
中山間地は今、こういう人たちによって支えられている。

何とかしたいと、相模灘の海を眺めながら北上。
熱海駅で市川くんを降ろして、出張を終えた。

 

次は「提案」を持参しなければ、行けない。

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