残すべき「世界の農業遺産」-ワサビを!

公開日: : 最終更新日:2020/11/12 生産者・産地情報, 食・農業・環境

前回からの続き。
日々の動きに、なかなかブログが追いつきません(泣)。

では、
「畳石式わさび田の仕組み(システム)は、完ぺきにエコである」から~

「畳石(たたみいし)式わさび田」とは-

石で組まれた棚田の上から順番に清流が流れ下っていく、
いわゆる掛け流しの仕組み。

田の表面は小さな砂礫が敷き詰められていて、
その下に石の層が作られ、またその下には
さらに大きな岩石の層が埋められている。

水は頭(田頭)から尻(田尻)へと表層を流れ、
また砂礫層から下の層へと染み込んでいった水は
暗渠(あんきょ:底に設置された水路)を通り、
田尻の水路で合流して下の棚田の田頭につながっていく。
そして最後は河川へと流れいたる。

このように田の表面と下部に水を通すことによって、
水温を安定させ(ワサビは高温と低温に弱い)、
不純物をろ過するとともに、栄養分や酸素を供給する。

また田は水を貯える装置でもあり、流れも緩めるため、
氾濫を抑制し、下流域を災害から守る役割も果たしている。
世界に誇る 「わさびダム」 と言おう。


(静岡わさび農業遺産推進協議会HPより拝借)

 

この「畳石式」栽培方法が生まれたのは明治中期の頃。
開発したのは、この地の石垣づくりの石工技術者である。
ここから全国に広がっていった。

よくぞ考え出したものだ。
高度な土木技術に加えて、環境に対する深い理解がなければ
生まれなかったシステムだと思う。
しかも水流の多い谷に一つ一つ、人力で石を積んでいった作業は、
想像してもし切れない。
この棚田を潰しては、ご先祖様に申し訳が立たないというものだ。

 

天城山系の水は絶えることなく、
わさび田を潤し続ける。
そこで一年を通して、収穫しては田を清掃し
苗を植える作業が、田を回りながら繰り返されてゆく。

農薬は撒かない。肥料もやらない。
天然のミネラルだけであの辛いワサビが育ち、
化学物質で水が汚染されることもない。

当然、生物多様性も豊かである。
ハコネサンショウウオなど何種もの絶滅危惧種の棲息が
確かめられている。

オーガニックの認定など、はなから頭にない、
オーガニック以上の伝統農法。
これぞ本モノの「アグロエコロジー」ではないか。

 

ここで生産者の登場。
この伝統農法を受け継ぎ、わさび田を守り続けてきた
「 ㈲ たか惣」の高村範利さん(56歳)。

わさび農家の次男だったが、跡を継ぎ、
もう30年以上、わさび一本で生きてきた。

高村さんのこだわりは、品種にも表れている。
まずは最高品種と言われる「真妻(まづま)」。
これを栽培できる知識と経験を持つ人は、
この地にも少ないと言われる。
栽培期間が長く(2年)、繊細なため手間がかかる品種。
すって舐めれば、上品な辛さのなかに、
ほのかな甘みが感じられる。

その真妻に加えて、独自に選抜・改良を重ねて産み出した
「翠流(すいりゅう)」という、たか惣オリジナルの品種を持つ。

これから植える苗を選別する高村さん。
一本一本確認しては、選り分けていく。

今では農協などから苗を買うのが一般的だが、
高村さんは苗にもこだわるのである。

ちなみに、たか惣さんと大地を守る会とは、
ずいぶん古いお付き合いになる。
以前は「わさび漬け」のみ、つまり加工品でのお取引だったが、
いつの頃からか止まってしまい、
お互いに記憶が定かでなくなるくらいのブランクが続いた。

そして、僕がこっちに着任し、
改めてたか惣さんにご挨拶に出向いたのが3年前。
その時にこのわさび田を案内され、以来、僕にとって
生の本わさびの取り扱いは、執念に近いものになった。

この度ようやく大地を守る会での販売が実現して、
未来に残すべきこの棚田の価値を多くの方にお届けできる
道が生まれたことを、嬉しく思う。
手に取った小さなわさび一本に、秘められた「大きな力」を
思い描いていただけるなら、本望というもので。

 

下のわさび田では、範利さんの息子さんが
収穫したワサビの調整・選別作業をしていた。
何代にもわたって伝承されてきた哲学と栽培技術は、
着実に次世代に受け継がれつつある。

一人黙々と作業を進めている。
ていねいな仕事ぶりが、見て取れる。

 

ご覧のように、たか惣さんのほ場には、
区画ごとにヤマハンノキが植えられている。
夏には葉っぱが繁茂し、それによって直射日光を遮ってくれる。
これも昔の人が編み出したエコ技術である。

ただ秋になって葉が落ちると、掃除する手間がかかる。
それもけっこう面倒な作業らしい。
今ではパイプを立てて
ネットで遮光するほ場が大半になってきた。

「景観としては、美しくないよねぇ・・」と、
出荷や販売を担当する弟の広氏さんは、
複雑そうに胸の内を語る。
時代の流れとして、これもやむを得ないと受け入れつつも、
風景の変化には、やっぱ寂しいものを感じるのだろう。

それでも田を維持してくれるなら、良しとするべきか。
我々は買った(食べた)ぶんしか支えられないし。

これは、たんなる守りたい「農業」遺産ではない。
今もって立派に存在する「国土保全」機能なのに。。。
提供しているのは、ただの香辛料ではないのだ。

「売り」ながら、じっくり考えていきたいと思う。

 

ワサビはアブラナ科に属する日本固有種。
和食に必須の素材である。
昨今は肉料理にも使われるようになったけど、
お肉でも、そこにワサビが添えられただけで、
もう和食ワールドに引き込まれた気分になる。
そんな力がある。

すりおろす時は、茎をむしり取って、
その茎の付け根(上)から、細かいおろし金で、
皮ごと、円を描くようにおろします。

上の写真は安いプラスチックの専用おろし金で、
ちょっと恥ずかしい気もするけど、
持ってしまった以上、使い続けるしかないと思ってます。

保存はポリ袋とかに入れて冷蔵庫に。
一ヵ月は持ちます。

コロナ禍のなか、
家庭で食事をする時間が増えたでしょうか。
時にはちょっと贅沢な気分になって、あるいはストレス解消にも、
わさびをすりながら香りに癒され、
料理にピリッと小さな花を添えてはいかがでしょうか。

市販の練りわさびの主原料は
多くはセイヨウワサビ(ワサビ大根)で、
添加物もしっかり使われています。

台所での、数分の「もうひと手間」が、
いろんな意味での安心につながり、
災害予防・国土保全にもつながっています。
いや、大げさではなく。

 

大地を守る会農産担当・市川からは、
せっかくなら南伊豆町の産地まで足を延ばしたい
という希望だった。

なら同行しましょう。
僕も久しぶりに南伊豆の生産者に会いたいし。

- ということで、中伊豆のわさび田をあとにして、
僕らは南伊豆へと向かったのだった。

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