茶の実拾い、に執念を見る

公開日: : 最終更新日:2018/01/30 あんしんはしんどい日記, 食・農業・環境

1月14日(日)、快晴。
朝9時、三島駅で(株)創薬研究所の斎藤京一会長を拾って、
沼津に向かう。

創薬研究所は大地を守る会のPB化粧水「オリザレート」のメーカーで、
この化粧水には大和川酒造の日本酒が原料として使われている。
つないだのは大地オリジナル日本酒「種蒔人」だった。
それが縁で、斉藤会長とは大和川酒造関係でよく顔を合わせる、
そんなお付き合いが続いている。

その斉藤会長と連れだって出向いたのは、
新東名高速道路・駿河湾沼津サービスエリアの上に位置する茶畑。

愛鷹(あしたか)山系を背に、駿河湾が一望できる。
ここから見れば、富士山は愛鷹山の向こうにある。
そしてこの辺のお茶は「愛鷹茶」というブランド名で親しまれている。

午前10時、「愛鷹山麓ぬまづ茶」の生産者に関係者、ファンの消費者、
メディア取材と思しき方たちがバラバラと集まってくる。
総勢30名強くらいか。

ここで実施されたのが、「お茶の実ひろい」体験会。
主催は沼津市商工会の「お茶資源活用部会」。
市内の茶業者(茶農家でもある)たちが立ち上げた組織である。

実は、創薬研究所では茶の実オイルを使った化粧品を開発中で、
すでに試作品まで完成させているのだが、
斉藤会長は「国産(できれば有機栽培)の茶の実で実現させたい」
という執念を持っていて、
僕が静岡にいることもあってか
「茶の実を集めてくれる農家を探してくれないか」
と依頼され、調べていくなかで
「お茶資源活用部会」にたどり着いた、てワケ。

しかし茶農家にとって、茶の実は無用のものである。
本来、茶葉で勝負しているプロは
茶の実が成るような育て方はしない。
大地を守る会にお茶を出荷している生産者に打診しても
「実を成らせる茶農家は “惰農(だのう/なまけ百姓)” と呼ばれます」
(水車村農園・臼井大樹さん)と言われたりした。
簡単に言ってしまえば、
実が成るとは木が子孫を残そうとする行為であり、
粗放にしていたり、木をいじめると実を多く付けるようになる、
ということらしい。

加えて、これは「手で拾う」しかない。
普通に育てている茶園で拾い集めても、大した重量にならない。

というわけで、僕が知る茶農家ではすべて
「茶の実成分の良さは知ってるけど、協力は無理」
という返事だった。
しかし、とは言え、急須のない家庭が当たり前になりつつあるような、
茶葉販売も苦難の時代である。
茶の木資源を最大限活用しようという取り組みを始めている産地も、
探せばあるのだった。
しかもここ沼津では、商工会が特産品開発も絡めながら
バックアップしようとしている。
全国的に耕作放棄茶園が増えていくなかで、
何とか活かす道を模索している人たち、なのである。

 

ちゃんと管理された茶園の隣に、
お茶資源活用部会が木を粗放的に伸ばした試験区画があった。

といっても完全な放任ではなく、
剪定など最低限の管理はしているとの事。
茶の木は伸びると相当デカくなるとは聞いていたが、
いまの品種でもそうらしい。
それ用の肥料も必要だとか。

地面に目を凝らせば、落ちている実が散見される。

たしかに・・・これを拾い集めても、どれだけの量になるか。
斉藤会長が求める、製品化するための必要量は、
1回の製造で「最低2~3トン」である。
このハードルは、相当にきつい。

参加者に説明を始める
お茶資源活用部会・部会長の鈴木崇史さん。
若いリーダーだ。

茶の実拾い、開始。

子どもたちは「あった」「みつけた~」と
楽しく騒いでくれるが、
こちらは一個々々拾いながら、遠い道のりを想像しては
手を休めて思案したりするのだった。

メディアの方がポーズを依頼するのは、
だいたい子供か女性と相場は決まっている。
僕も便乗して一枚撮らせていただく。
沼津・あしたかの「茶の実ガール」!です。

鬱蒼と伸びた木の間をしゃがんで拾い歩く途中、
思わずつかみそうになったモノがあった。
鹿のフンだ。

こんな所まで入り込んできているとは・・・
やっかいな奴らだ。

小一時間作業して、スーパーのレジ袋に溜まった量は
2~300グラムくらいか。
そして全員で集めた本日の収穫量、およそ3㎏。

斉藤会長、言葉少なに見つめるばかり。
「何か、もっと手を考えないと、ですね」と、
僕は慰めにもならない無責任な発言をしてしまう。

殻にくるまっている状態のモノもけっこうある。
殻は取り除いて出荷してもらわなければならない。
手間賃を考えれば、とても高い原料代になりそうだ。

 

拾い終わったあとに行なわれたのは、
「お茶の実大相撲、初場所」。

指で実をしっかりつかんで、先端をつけて押し合う。
割れた方が負け。

エビスダニ関は、あっけなく一回戦敗退。
「子どもの頃は、こんなことして遊んでたんだよね」
と生産者から聞かされる。
そうですよね。
遊び場や遊び道具は自然の中に、
あるいは田んぼや畑に、ふんだんにあった。
おやつだってあった。
動物や虫とも触れ合いながら、里山から学んでいたことは多い。
懐かしんでばかりでは、いけないんだけど。

最後まで残った人たちで、記念撮影。

手前、右から3人目が斉藤会長。
表情が硬いね。
頭の中は今日の青空のようには晴れないか。

茶の実の成分組成は同じツバキ科の椿より優秀だと
力強く説明はできても、製品化に至る道はまだ細く、
斉藤さんの挑戦はまだまだ続きそうだ。
いや、他人事ではない。
中国産に逃げず、国産原料で作ってこそ意味があるのだと言われれば、
こっちも逃げるワケにはいかない。
伴走しますよ、斉藤さん。
どうにかして形にしてみせましょう。

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