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掟に守られてきた原生林

2015/05/16
  • かんなみ百景
掟に守られてきた原生林

田んぼに水が入ると、待っていたかのように
一斉にカエルが鳴き始める。
ニホンアマガエルの大合唱だ。
夜、その声に包まれながら残業している自分がいる。
社会人になってウン十年、こんな職場環境は初めてだ。
もう僕は都会には戻れないかもしれない。

さて、前回の続き。
函南原生林の姿をお伝えしたい。

ここからいよいよ「不抜の森」へと入っていく。
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ブナ、アカガシ、イヌガシ、ケヤキ、ヒメシャラ、
オオモミジ、イヌツゲ、タンナサワフタギ、ヤマボウシ・・・
標識を見ては確かめていくが、途中でメモをやめた。
どうせ覚え切れない。

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立派な巨樹・古木が次々と姿を現し、
ちっぽけな僕を圧倒する。

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沢は森で蓄えられた水とミネラルを、
ゆっくりと麓に運ぶ道である。

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古老のようにたたずむアカガシに出会う。

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根の廻り11.3m、樹高16m、
樹齢500年(推定)と記されている。

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行く手を阻むように倒れているアカガシもあった。

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こちらは樹齢400年と推定されるが、
1989(平成元)年8月の台風で
数回の落雷に襲われ、倒れてしまった。

巨木もこうして、風や雷やツルマサキなどによって
毎年何本かが枯死している。
しかしそれも生物の餌となり、また土となって
生命を育み続ける。

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これも落雷によると思われる。
自然界は厳しいが、生命の鎖は途切れない。

一枚の看板があった。

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10年前まで、ここに「日本一のブナ」が聳えていた。
樹齢700年、樹高24m、幹周6.35m。
1988年、当時の環境庁が「自然環境保全基礎調査」
(通称「緑の国勢調査」)を行なって、
初めて全国的な巨樹・巨木の調査を実施した。
そこで日本一のブナとして認定されたのだが、
一躍注目を集めたことで訪問客が急増し、
下草や灌木も消失して根腐れを起こしたらしい。
柵を設けて規制したものの結局2005年6月に倒木した。

ブナは寒冷地の木で、静岡では
標高千mを超す地帯にしか生育してないのだが、
ここ伊豆地方の600~800m地帯で
これだけの巨樹が成長したのは珍しい事例なのだそうだ。
やっぱ「日本一」の看板は残しておこう。

ちなみに、巨樹といえば屋久島の縄文杉が有名だが、
あそこの一帯は江戸時代に伐採されたあと
再生したものだと聞いている。
形が悪く、伐採されずに残った「ブスギ」(ぶさいくな杉の意)
の代表が縄文杉だと。

こちら函南原生林は、幕府の伐採命令に対して
粘り強く抵抗して守った歴史がある。
水源の森として入山から伐採まで禁止したという掟を
定めた先人の慧眼にはどのような経緯があったのか、
知りたいものだ。

こちらのアカガシは樹齢700年(想定)。
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森には神が宿っている。
人間は畏(おそ)れというものを取り戻す必要がある。

長い年月のうちにできる樹洞は、
新しい生命を育てる場所でもある。
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遊歩道をゆっくりと歩くこと2時間半。
上り下りもけっこうあってトレーニングにも悪くない。

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ウグイスに交じって、ここでも画眉鳥がうるさい。
ホント、よく鳴く鳥だ。
見つけた、と思ってカメラを向けたら、
キビタキだった。
画眉鳥はキビタキの鳴きまねもする。

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この原生林が抱える炭素量はどれだけあるだろう。
CO2を吸収する量は葉の量に比例する。
原生林の巨樹たちは現代の矛盾も吸収してくれているのだ。

函南にお越しの節は、ぜひ原生林で森林浴を
楽しんでお帰りくださいませ。

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